
会社を興したい、自分でビジネスに挑戦したいと、起業をする前は気持ちが先行するものです。
起業のために貯金をしている方、本業と並行して副業をしている方など状況はそれぞれですが、自己資金が全くなくても起業することはできるのでしょうか。
今回は、自己資金がなくても起業ができる方法を紹介していきます。
自己資金がなくても起業できる?
画期的な事業計画を思いついても、起業するには起業資金とその後の運転資金が必要になります。
いま事業がうまくいっている人の全員が、最初から自己資金があったわけではありません。
資金繰りに困ったけれど、なんとか立て直して今がある企業もたくさんあります。
事業を興すには資金が必要ですが、自己資金がなくても事業内容やその後の計画がしっかりあれば、資金を借りて起業することは可能です。
起業するためにお金を借りる方法としては、公的資金・銀行融資・クラウドファンディング・ビジネスローンがあります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
公的資金に頼る
国は、日本経済の再興、産業の新陳代謝、地域の活性化を推し進めるために、創業者の資金調達を支援する制度を整備しています。
国が支援する資金調達方法としては、以下があります。
中小機構ファンド出資
設立5年未満の創業間もない中小企業への投資を目的として、中小機構のファンドから出資する制度です。
中小機構は経済産業省の中小企業庁の機関で、地方自治体・金融機関などと提携しながら、創業間もない中小企業の支援や相談業務を行っています。
創業を考えているときに、事業計画・資本政策・技術・マーケティングなどを相談すると良いでしょう。
日本政策金融公庫融資
中小機構は主に出資となりますが、日本政策金融公庫は融資で資金調達します。
日本政策金融公庫は国の政策金融機関で、通常は創業から数年経ってから担保がないと融資してもらえないところ、「新創業融資事業」では担保や保証人なしで融資を受けることができます。
ただし、融資金の10%の自己資金が必要です。
最大3,000万円の借り入れができますが、その場合300万円の自己資金が必要となります。
一方で、勤めていた企業と同じ業種の事業を始める場合、産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を始める方等に該当すれば、自己資金なしでも借り入れできます。
創業支援等事業計画の認定を受けた市区町村または認定連携創業支援等事業者が実施するセミナー、アドバイザーの支援を受けて創業計画書の作成などの創業支援等事業を受けると、市区町村から創業支援の証明書が発行され特定創業支援を受けた創業者として認定を受けることができます。
認定を受けることで、日本政策金融公庫から自己資金なしで融資を受けられるだけでなく市区町村によって様々な特典が受けられるため、認定を受けるのがおすすめです。
政策金融公庫からの融資は、年率0.88~2.85%と非常に低金利で借りることができるのがメリットと言えるでしょう。
事業者向け補助金
ものづくり補助金として、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を、上限1,000万円として補助を受けられます。
その他、小規模事業者持続化補助金として、販路開拓等の取組経費の一部を上限50万円として補助を受けられます。
さらに、特定創業支援等事業の認定を受けていると上限が200万円となります。
また、オープンイノベーション促進税制は、投資する側が創業間もない会社に投資すると税制メリットを受けることができるため、投資してもらいやすくなる制度です。
個人投資家が創業間もない会社に投資したときに税制メリットが受けられるのがエンジェル税制で、株式会社やベンチャーキャピタルが投資した時に税制メリットが受けられる特徴があります。
オープンイノベーション促進税制は期限はありますが、延長される可能性があります。
- エンジェル税制
特定新規株式 特定株式 優遇条件 ・創業5年未満
・営業キャッシュフロー赤字
・新しい事業活動をする会社
・大企業の子会社ではないこと・創業10年未満
・新しい事業活動をする会社
・大企業の子会社ではにこと投資する個人側のメリット ①年間800万円を上限に寄附金控除
②取得対価を一般株式等(非上場株式)、上場株式等の譲渡所得から控除できる。
③損失を一般株式等(非上場株式)、上場株式等の譲渡所得と相殺できる。
④損失を3年間繰越控除できる。
①と②は選択適用①取得対価を一般株式等(非上場株式)、上場株式等の譲渡所得から控除できる。
②損失を一般株式等(非上場株式)、上場株式等の譲渡所得と相殺できる。
③損失を3年間繰越控除できる。 - オープンイノベーション促進税制(※2024年3月31日まで)
優遇条件 | ・設立10年未満への出資 ・大企業からの出資は1億円以上/件 ・中小企業からの出資1,000万円以上/件 ・資本金増加を伴う現金出資 |
投資する法人側(株式会社、CVC)のメリット | ①株式の取得価額の25%が所得控除(5年以内に売却すると益金算入) |
まず、資金調達を含め、中小機構に相談したり、市区町村や認定連携創業支援等事業者が行うセミナーへの参加から起業準備を始めると良いでしょう。
銀行融資に頼る
通常の銀行融資となると、創業前の会社への融資は自己資金がないと難しくなってきます。
銀行は、返済ができないと損失を負うことになるため、返済能力があるかを厳しく審査をします。
自己資金がない場合は、担保に加えて不動産や保証人がいないと難しいと言えるでしょう。
そこで、創業間もない方への銀行からの資金調達方法としては、制度融資・信用保証協会保証付貸出があります。
制度融資・信用保証協会保証付貸出は、地方自治体や金融機関、信用保証協会が連携して実施する融資のことをいいます。
融資を希望する場合、制度融資・信用保証協会保証付貸出を行う地方自治体に承認を受けたうえで、連携する銀行や信用金庫などに融資の申し込みを行うと、融資を受けることができます。
保証は信用保証協会が行ってくれるため、担保や保証人を出す必要はありまん。
地方自治体が、利子の一部や保証料を補助してくれるため、自己資金がなく創業間もない場合でも低金利で借りることが可能です。
クラウドファンディングに頼る
クラウドファンディングとは、インターネット上で資金を集めることをいいます。
ユーザーが資金を出してくれる代わりに、企業側はリターンとして何かを提供することで成り立っています。
リターンには、資金出資の見返りとして商品を引き渡しする「購入型」、出資者に株式を発行する「投資型」、公共性のある事業なら「寄付型」があります。
寄付型なら、公共性があり地域に貢献できる事業なら、地方自治体と連携することで、ふるさと納税制度を利用することができるため、寄付が集まりやすくなるメリットがあります。
ただ、不特定多数にインターネット上で資金を集めることとなるため、まだ企業として規模が小さくても説明責任を果たす必要がある点は注意が必要です。
事業の進行状況や売上、地域への貢献度などインターネットを通して分かりやすく報告して、活動の魅力を伝えなくてはいけません。
ビジネスローン(カードローン)に頼る
ビジネスローンは、事業ローンともいい、個人事業主や法人が事業目的で借りるローンのことを指します。
事業目的で借りるため、基本的には借りた資金を個人的な用事に使うことはできません。
ビジネスローンは、担保・保証人が不要なため、担保が必要なローンに比べると金利は高くなりますが、資金使途は事業目的なら自由です。
担保等が必要な通常の銀行ローンに比べると、柔軟な使い方が可能なのは魅力でしょう。
ビジネスローンの借り方には2通りあり、審査に通ってから一括で振り込んでもらう方法と、カードローンのように上限額までならいつでも引き出せる方法があります。
借入先は銀行や消費者金融などで、銀行の方が審査が厳しく、審査にかかる期日が少し長くなりますが、金利は消費者金融より低くなる可能性が高いです。
次に、具体的なビジネスローンを紹介していきます。
アイフル「ビジネスファイナンス(法人向け)(個人事業主向け)」
アイフルのビジネスファイナンスは、即日融資が可能です。
ローンカードを使った借り入れも可能で、カードで必要なときにいつでも資金を引き出すことができます。
5秒診断を使って、借りれるかどうか診断を受けることもできるので、不安なときは試しておくのがいいでしょう。
ただし、アイフルのビジネスファイナンスの利用条件は業歴2年以上としているため、起業するための資金としては借りることができません。
利用できる方 | ・業歴2年以上 ・法人は代表が75歳まで、個人事業主は69歳まで |
金利(年率) | 3.1~18% |
借入金額 | 1,000万円以内 (カードローンは新規で500万円) |
借入期間 | 最長5年間、一括返済は最長1年 |
担保・保証人 | 不要(法人の場合は代表者が連帯保証する必要あり) |
融資手数料 | 無料 |
必要書類 | 法人は代表者の本人確認証と決算書 個人事業主は本人確認証と事業内容確認書 |
Pay Pay銀行「ビジネスローン(法人向け)(個人事業主向け)」
Pay Pay銀行は、原則必要書類なし&24時間365日という条件で審査を受けることができるため、手軽にいつでも利用できるのがメリットです。
借り入れはカードローン方式で、審査に通れば上限額までいつでもATMで引き出し可能になります。
個人事業主の場合は、業歴の条件がない点も魅力と言えます。
法人向け | 個人事業主向け | |
利用できる方 | ・業歴2年以上 ・代表者が満20歳以上満69歳以下 |
・満20歳以上満69歳以下 |
金利(年率) | 変動金利1.8~13.8% | 変動金利1.8~13.8% |
借入金額 | 500万円以内 | 500万円以内 |
借入期間 | 1年契約(自動更新)5年毎再契約 | 1年契約(自動更新)5年毎再契約 |
担保・保証人 | 代表者の連帯保証 | 不要 |
融資手数料 | 無料 | 無料 |
必要書類 | 原則不要 (300万円超の借入の場合決算書) |
原則不要 (300万円超の借入の場合所得証明書) |
プロミス「自営者カードローン」
プロミスの自営業者カードローンは、プライベートの生活費にも使えるのがメリットです。
カードローン形式で、上限額設定後いつでもATMから引き出し可能になります。
融資申し込みから最短30分~1時間で即日融資を受けることができるので、急ぎのときにも安心です。
利用できる方 | ・20歳以上65歳以下の自営業者の方 ・生計費にも利用可能 |
金利(年率) | 6.3~17.8% |
借入金額 | 300万円以内 |
借入期間 | 最長6年9ヶ月 |
担保・保証人 | 不要 |
融資手数料 | 無料 |
ビジネスローンの注意点
ビジネスローンの中には、融資までのスピードが早く、急な出費に対応することができるものもあります。
従業員の給与支払や急な支払い、返済などにも借りた資金を使うことができるので、非常に便利と言えます。
一方で、ビジネスローンは他の有担保ローンや公的機関からの借り入れに比べると、金利が高くなっている点に注意が必要です。
例えば、政策金融公庫の「一時的に業況が悪化している方向けの融資」は年率1.58~2.85%となっていますが、ビジネスローンは年率3~18%が適用されます。
- 500万円を10年ローンで借りた場合
金利 | 年1.5% | 年15% |
毎月の返済額 | 44,896円 | 80,667円 |
支払利息 | 387,520円 | 4,680,040円 |
返済総額 | 5,387,520円 | 9,680,040円 |
融資を受けたときはその資金で事業を継続できたとしても、金利が高いとその後の返済額が苦しくなる可能性があります。
また、事業ローンの利用で、通常の銀行融資の審査が通りにくくなる可能性があります。
そのため、ビジネスローンはすぐに返済できる見通しがある状態で、一時的に借りる前提で利用しましょう。
返済の見通しが立たないときに一時しのぎで資金を借りても、余計にその後の返済で資金繰りを悪化させてしまう可能性は考慮する必要があります。
まとめ
自己資金がなくても、起業することは可能です。
まずは事業目的などを明確にして、できるだけ低金利でお金を借りましょう。
審査が通らないときは、ビジネスローンを活用することも考えられますが、金利は高くなるため返済できるのか資金計画を慎重に考えて検討する必要があります。
また、創業間もないころは資金が枯渇してしまうことが致命傷となります。
ビジネスローンで凌ぐことも考えられますが、最初から少なくとも運転資金を半年分は確保できるように融資を受けておくことも大事です。