カードローンに時効はある?

カードローンに時効はあるの?

時効が適用されるのは犯罪だけと思いがちですが、実はカードローンにも時効があります

カードローンに適用されるのは、民事上の時効です。

第七章 時効
第三節 消滅時効

(債権等の消滅時効)

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

このように、最後の支払い期日から5年経過すると時効になります。

また、時効になることを知らなかったとしても、支払い期日から10年経てば時効が成立する可能性があります。

いずれか早い方が適用されるので、時効が成立するのは実質5年と言えるでしょう。

信用金庫のカードローンは?時効にかかる期間が10年から5年に変更

上記の法律は改正後のもので、改正前は時効に商法522条という全く違う法律が適用されていました。

その際は、信用金庫は営利目的の運営ではないので商法は適用されず民法167条が適用され、10年が経過しないと時効が成立しませんでした。

その後、法改正によって貸主による区別がされなくなったため、2020年以降の信用金庫での借り入れは5年で時効が成立します。

ただ、2020年以前に成立した信用金庫の借り入れに関しては時効に10年必要なので、いつ契約したかが重要です。

ちなみに、銀行は法改正前も時効に必要な年数は5年なので変わりません。

時効に必要な期間
  • 消費者金融:5年
  • 銀行:5年
  • 信用金庫(2020年以降の契約):5年
  • 信用金庫(2020年以前の契約):10年

時効を迎えたらどうしたらいいのか

借り入れから5年または10年が経過したとしても、それだけで勝手に時効になるわけではありません。

時効が成立するには、時効の援用という手続きが必要です。

時効の援用は、融資をした相手に「時効になったので返済をすることはありません」という主張をする手続きのことを指します。

第七章 時効
第一節 総則

(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

民法145条によって、時効とは当事者が主張しない限り効果が発生されないことになっているので、意思表明をしないといけません。

時効の援用には、「援用通知書」内容証明郵便で送る必要があります。

時効の援用通知書は、以下サイトのテンプレートに従って記入すれば問題ないでしょう。

参考:時効援用通知書の書き方ポイント、内容証明郵便の書式を解説

援用通知書はどう書けばいい?

1.債権の内容

時効の援用を行うには、どの借り入れに対して時効を主張するか、きちんと分かりやすくする必要があります。

そのため、援用通知書には借り入れ日・借り入れ額・契約番号(会員番号)・ふりがなつきの援用申請者氏名・援用申請者の住所・生年月日を必ず記入するようにしましょう。

時間が経っていると、借り入れ日や借り入れ額がわからないこともありますが、契約番号を記入すれば貸主の方でわかるようになっています。

そのため、ローンカードに記載されている契約番号は、必ず控えておきましょう。

また、住所は借り入れをした時に住んでいた場所にしておく必要がある点も要チェックです。

2.時効となっていることを伝える

借り入れから一切返済をしていない場合は「借り入れ日の翌日から〇年経過している」、返済をしていた場合は「最終返済日の翌日から○年経過している」と書く必要があります。

時効の援用をいつ申請したかというのは、裁判になった際に非常に重要です。

まだ時効が成立していないのに時効の援用をしてしまっていたと扱われないように、援用通知書を送る日付をきちんと記入して時効であることが伝わるように心がけましょう。

3.時効の援用を表明

最も重要なことですが、時効になったと主張するには時効の援用が必要です。

そのため、カードローンの借り入れについての情報と時効に関しての期間を記入した上で、消滅時効の援用が成立することをしっかり書きましょう

メインの情報になるので、うっかり忘れないように意識しておくのが重要です。

4.援用申請者の情報

援用通知書を送る上で忘れてはいけないのが、誰が時効の援用を申請しているのかという情報です。

きちんと、援用申請者の氏名と住所と連絡先を記入して、受け取った方が連絡を取りたい際に問題が起きないようにしましょう。

信用情報の情報削除依頼も書いておこう!

必須ではありませんが、消滅時効の援用で時効が成立すると、信用情報に記録されている事故情報を削除してもらうことができます

また、時効が成立した場合は、返済を滞納をした事実そのものがなくなるので、信用情報に登録情報を削除してもらうように働きかけるのが有効です。

時効援用通知書には、「本書面を受け取り次第、速やかに信用情報機関に対して登録情報削除の依頼をお願いいたします」といった内容を記入しておきましょう。

時効まで逃げ切ることはできるのか

カードローンの時効までの期間は5年間ですが、その間じっと待っているだけで良いかというとそうではありません。

借り入れの返済を滞納している間に、請求・差し押さえ・仮差し押さえ・仮処分を受けると時効までの期間が延びてしまいます

他にも、返済をする意思表示をした際や、債権の存在を認識する行為を行った場合も、時効が先延ばしになります。

以下で、時効の先延ばしの原因について詳しく解説します。

時効が先延ばしになる原因

原因1)請求

借り入れの返済をするよう求めるのが請求ですが、請求には裁判上の請求、支払督促などの種類があります。

請求が行われると時効が半年間先延ばしになり、時効が成立しにくくなります。

また、手紙を送った時点で送り届けたことにできる「付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)」を使われると、手紙を受け取らなくても訴状が届いた扱いになるので気をつけましょう。

さらに、裁判を受けた覚えがないとしても、住所不明などの理由で自覚していない間に判決が取られることもあります。

ちなみに、先延ばしになった半年の間に再度請求が行われても、さらに先延ばしになることはありません。

原因2)仮差し押さえ・差し押さえ・仮処分

利用者がカードローンへの返済を滞納すると、融資した側は財産を差し押さえて回収することができます。

差し押さえは、判決や公正証書といった公的書類を持っていると可能になり、実行されれば自分が持っている財産を自由に使うことができなくなるのです。

また、差し押さえが実行されれば時効までの期間はリセットされ、仮差し押さえは請求と同様に時効の成立を半年間先延ばしできます。

仮差し押さえと仮処分が実行された時点で、自分の財産を勝手に売ることはできなくなります。

返済に充てる財産を使うことも不可能になる点に注意しましょう。

ちなみに、仮差し押さえ金銭や債券が対象で、仮処分不動産などが対象です。

原因3)債務の承認

債務の承認とは、債務があることを債務者自身が認めることです。

例えば、言葉・書類・間接的行為などで支払いをする意思を見せただけでも、債務を承認したことになります

また、1,000円だけの返済や利息のみの支払いでも、債務を承認したと見なされます。

カードローンの返済から逃げ続けることは可能?

カードローンの返済をせずに時効を狙う上で難所になるのが、訴訟による支払い請求や支払いの督促に加えて、債務の承認です。

もしも時効が中断されると、その翌日からさらに5年経たなければ時効は成立しません

さらに、裁判所から支払い督促や請求を受けると時効までの期間が半年延長され、時効の成立がより難しくなります。

他にも融資側から和解や調停の申立てが行われたり、破産手続きが進められたりしても、時効の中断が行われることになります。

カードローンの時効を成立させることは、非常に難しいことを理解しておきましょう。

ただ、訴訟を起こされても、途中で訴訟を取り下げた場合は訴えそのものがなかったことになるので、時効は中断されません。

加えて、融資の一部に対して訴訟が行われた場合は、時効の中断が適用されるのはその一部のみになり、訴訟されなかった融資の時効までの期間はそのままです。

長期滞納をすると裁判に発展する可能性が高い

カードローンの返済を滞納すると、まずカードローン会社からメールやSMSで支払いをするように連絡が来ます

その後は督促状が自宅に届くようになり、それも無視していると自宅や勤務先への訪問が行われます。

ただ、法律の範囲内で行われるため、深夜・早朝に繰り返し訪問されることや恫喝される心配はありません

カードローンは保証人不要で、家族や友人に支払いが請求されることもないので、その点も安心でしょう。

そして、支払いの滞納から3ヶ月~4ヶ月が経過すると、融資側が裁判の準備を始める可能性が出てきます。

少額訴訟は60万円以下の借り入れの場合に利用でき、それ以上の金額の返済が要求される場合は通常裁判の申立てになります。

少額訴訟は1日で判決が下り、控訴できない点が大きな特徴です。

ただ、中には3年以上滞納しているのに訴えられないケースもあります。

もしもそのまま5年経つまで訴えられなかった場合は、時効の援用に移行して良いでしょう。

中には、借り入れ利用者に知識がないと考えて時効期間が過ぎたのに訴えてくる場合もあるので、慌てず弁護士に相談するか時効の援用を行うのがオススメです。

裁判から逃げるのはやめた方がいい!

時効の期間が経過する前に裁判所への訴えが行われた場合は、逃げずに裁判に応じましょう。

裁判に出席しないと融資する側のみの訴えが受け入れられ、自分の希望が一切通らない判決が下る可能性があります。

かといって、丸腰で裁判所へ連絡すれば、債務を承認したとされて時効の中断に繋がりかねません。

裁判に発展する可能性がある場合は、まず弁護士事務所に相談をしましょう。

時効の援用が適用される場合は、3万円から5万円の費用で手続きをしてくれるケースが多くなっています。

5万円は痛い出費に思えるかもしれませんが、元本と利息に加えて年20%の遅延損害金を払うとなると、数百万円に膨れ上がっている可能性もあります。

その支払いをゼロにできると考えると、素人ではなくプロの弁護士にお願いするのは非常に確実かつ信頼性が高いと言えるでしょう。

数年間も返済の督促が来なかったのに突然督促が来た場合は、直接の対応を避けて弁護士事務所に依頼してください。

裁判の流れ

[ptimeline color=”green”]

[ti label=”STEP1″ title=”督促状が郵送される”]裁判の督促状を受け取る[/ti]

[ti label=”STEP2″ title=”弁護士に連絡”]法律事務所で時効の援用ができるかを確認[/ti]

[ti label=”STEP3″ title=”(時効の援用が)可能な場合”]裁判で時効の援用を主張して返済の義務を消す[/ti]

[ti label=”STEP4″ title=”(時効の援用が)不可能な場合”]和解に持ち込む[/ti]

[ti label=”STEP5″ title=”(時効の援用が)不可能な場合”]分割払いなどの支払いプランをたて、決めたプランで返済する[/ti]

[/ptimeline]

カードローンの時効と過払い金について

カードローンの時効が成立すると借り入れ自体がなくなりますが、過払い金請求の対象である可能性があります

過払い金請求は、2010年6月18日以前にカードローンの借り入れをしたことと、上限金利が年20%超29.20%以下のカードローンを利用していたことが条件です。

なお、銀行や信用金庫からの借り入れは、過払い金請求の対象になりません

実は、過払い金請求カードローンの時効には大きな関係があります。

それは、過払い金請求の対象になるような高金利で融資をしていたカードローンは、過払い金請求をされないために督促をしていない可能性が高いからです。

つまり、余分に払ってもらった利息分を取り返されたくなくて、督促や裁判所への訴えをしていないのです。

督促が一切ないまま5年経過した場合、まずは法律事務所に相談をして、時効の援用をしたいカードローンが過払い金請求の対象なのか必ずチェックしましょう。

カードローンの時効におけるメリットとデメリット

メリット

時効の援用をすると、借り入れ額が一切なくなります

また、信用情報に残っている記載も全て消えるため、すぐにクレジットカードやカードローンの申し込みが可能です。

さらに、未払いだった利息や遅延損害金も0円にしてもらうことができます。

原則として、時効の援用はメリットしかないということを覚えておきましょう。

デメリット

時効の援用をすると、信用情報から事故情報が消えます。

俗に言う「ブラックリスト」からも消えるということです。

ただ、それはあくまで信用情報に限った話で、カードローン会社が独自に作成している社内ブラックリストからは除外されません

また、信用情報を取り扱うCICは、しばらく事故情報を削除しない可能性があります。

援用通知書を送らないといつまでも事故情報が残る可能性があるので、忘れないようにしましょう。

仮に削除されなかったとしても、5年後に事故情報は信用情報から自然と抹消されます。