中小企業や個人事業主において、諸経費を現金で管理するのは非常に面倒な作業となります。そこで活用したいのがビジネスカード(法人向けクレジットカード)です。
経営者にとってのビジネスカードのメリットは、公私の支払いを分けやすいこと、利用明細書により経費を管理しやすくなること、銀行振込手数料を削減できること、従業員による立て替え払いや経費精算の手間が省けること、ネットでの購買に便利なこと、オフィスの光熱費の支払いにも使えること… などが挙げられます。
また、カードを利用した日から実際の支払い日まで時間の猶予があり、事業資金の計画的な運用がしやすくなることもメリットとして挙げられるでしょう。
ここではまず、ビジネスカードの一例として、三井住友VISAビジネスカードの特長を紹介します。
●ETC&新幹線予約が便利
ETCカードを追加することで有料道路の料金をカード決済できます。また、「JR東海エクスプレス予約サービス(プラスEX会員)」をカードに追加すると、東海道・山陽新幹線(東京~博多間)のネット予約とチケットレスサービスを利用できます。いずれも出張で便利なサービスです。
●海外旅行損害保険
海外出張時の病気やケガを補償します。ビジネス一般カードは最高2,000万円の補償、ビジネスゴールド/プラチナカードは最高5,000万の補償となっています。
●海外キャッシュサービス
海外出張時、現地通貨をカードでキャッシングできるので、そのつど外貨を準備する必要がなくなります。
●空港ラウンジサービス
ビジネスゴールド/プラチナカード会員は、全国主要空港のラウンジを無料で利用できます。
●ビジネスサポートサービス
ビジネスサポートサービスとして、ビジネスに役立つ各種サービスで優待を受けられます。対象企業は、アスクルサービス、DHLエクスプレス、日産レンタカー、タイムズ カー レンタル、アート引越センターなど。
●ポイントサービス「Vポイント」
カードの利用金額に応じてもらえるポイント「Vポイント」を貯めて景品などと交換できます。
●福利厚生代行サービス
国内外数1,000ヵ所の契約宿泊施設やスポーツクラブ、人間ドックや英会話学校などの幅広いサービスを割引料金で利用できます。
●ゴルフ国内エントリーサービス
日本国内のゴルフ場(約700コース)の平日プレー予約を代行します。接待などに便利なサービスです。
●ショッピング補償
クレジット決済で購入した商品の破損・盗難による損害を、購入日および購入日の翌日から90日間補償します(一部補償対象外あり)。
三井住友VISAビジネスカードには3段階のグレードがあり、下からビジネスクラシック(一般)カード、ビジネスゴールドカード、ビジネスプラチナカードとなっています。
このうち、年会費と利用枠のバランスから使い勝手がいいのはビジネスゴールドカードですが、このカードにはさらに「ビジネスゴールドカード 」「ビジネスゴールドカードfor Owners」の2種類があります。
この2種類のカードはどのように違うのでしょうか。その違いをまとめてみましょう。
●申し込み資格
ビジネスゴールドカードは法人のみを対象としており、カード利用者は20名以下を目安にしています。
一方、ビジネスゴールドカードfor Ownersは満20歳以上の法人代表者や個人事業主を対象としています。つまり、後者では個人として入会することになるわけです。そこで、ビジネスを法人化していない方でも申し込めます。
●年会費
ビジネスゴールドカードは年会費1万円(税別)で、追加カードごとに2,000円(税別)がかかります。
一方、ビジネスゴールドカードfor Ownersもまた年会費1万円(税別)で、追加カードごとに2,000円(税別)がかかります。ただし、こちらは初年度年会費が無料となります。
●カード利用枠
ビジネスゴールドカードは20~300万円、ビジネスゴールドカードfor Ownersは50~200万円となります。
●海外キャッシング
ビジネスゴールドカードは利用枠最高30万円で、ビジネスゴールドカードfor Ownersは利用枠最高50万円となります。ただし、ビジネスゴールドカードfor Ownersで海外キャッシングを利用できるのは個人事業主の方のみです。
また、国内でのキャッシング(利用枠最大50万円)も、 ビジネスゴールドカードfor Owners会員のうち個人事業主の方のみとなります。
●支払い方法と決済口座
ビジネスゴールドカードは1回払いのみで法人名義口座からの決済となります。一方、ビジネスゴールドカードfor Ownersは一括払いのほか分割払いやリボ払いが使え、法人(屋号名)口座のほか個人名義口座も決済口座として利用できます。
●電子マネー
ビジネスゴールドカードには電子マネー機能が追加できませんが、ビジネスゴールドカードfor Ownersには、iD、Apple Pay、PiTaPa、WAONなど電子マネー機能が追加できます。
●ポイントサービス
VISAのポイントサービス「Vポイント」において、ビジネスゴールドカードはポイント有効期限が2年間で使い道が景品交換のみであるのに対し、ビジネスゴールドカードfor Ownersはポイント有効期限が3年間と1年長く、キャッシュバックや他社ポイント移行などに使えます。
以上の特長を見ると、ビジネスゴールドカードに比べると、ビジネスゴールドカードfor Ownersは、より個人向けカードの性質が強いものだといえそうです。
申し込み条件や利用枠、国内キャッシングの有無などを考えると、ビジネスゴールドカードfor Ownersのほうが使い勝手がよさそうです。個人事業主でも作れるというのも大きなメリットでしょう。
ただし、利用枠の上限は200万円となっていますが、カード利用実績が少ないとそれよりも低い金額に設定されてしまいます。そして、利用枠があまり小さいとビジネス用途としては用を成しません。
そこで、ビジネスカードを検討するときの、もう1つの選択肢として考えたいのが、個人事業主向けのアメックスである、アメックス・ビジネス・ゴールドカード(アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード)です。
なぜ、これをおすすめするかというと、アメックスには決まった限度額がないからです。もちろん、カードのグレードや会員の利用実績に応じて一定の目安はありますが、その目安を超えたからといってすぐに使えなくなるわけではありません。
ただ、限度額の目安がいくらかわからないとなにかと不安ですから、高額利用を予定しているなら、コールセンターに電話して事前に相談しておきましょう。資産状況の開示などにより高額利用が可能となります。
アメックス・ビジネスゴールドカードは利用枠に柔軟性があるというだけでなく、ビジネスに便利なサービスが付帯しています。次にそれを見ていきましょう。
●ミーティング・スクエア
東京都千代田区「帝国ホテル」本館5階に設置されたアメックスビジネスカード会員限定のビジネスラウンジを月会費2万円(税別)で利用できます。同伴者は1名まで無料で、2名以上は30分あたり500円(税別)がかかります。都心での商談が多い方にとってリーズナブルなサービスです。
●ビジネス・ダイニング by ぐるなび
エリア、予算、人数などの希望に合わせ、会食や接待にふさわしいレストランを経験豊富なコンシェルジュが提案・予約します。また年間5回以上の利用で、抽選により人気の手土産をもらえます。
●ビジネスカード会員限定イベント
ビジネスカード会員限定イベント「DISCOVERY」を定期開催しています。過去のイベントに「佐々木圭一に学ぶ、『伝え方が9割』のメソッド」「田崎真也に学ぶ、スマートなワインの選び方」などがあります。
●ゴルフ・デスク
充実したゴルフ・ライフを楽しむイベントの開催をはじめ、全国1,100以上のゴルフ場および海外(ハワイ・グアム・サイパン)提携コースの予約・手配を無料で行います。接待や社内コンペなどに便利なサービスです。
アメックス・ビジネスゴールドカードの会員はそのほか、次に紹介するようなアメックスならではのさまざまなサービスを受けられます。
・手荷物宅配サービス(空港)
海外出張の出発時に自宅から空港まで、帰国時には空港から自宅まで、カード会員1名につきスーツケース1個を無料で配送します(羽田空港・成田国際空港・中部国際空港・関西国際空港)。
・手荷物宅配サービス(東京駅)
東京駅構内の宅配カウンターにて手荷物を預り、東京23区内の宿泊ホテルへ当日無料配送します。事前の登録・予約は不要です。
・エアポート送迎サービス
海外出張出発・帰国時に、提携タクシー会社の車両をカード会員専用でチャーターし、利用可能地域内の指定の場所と空港との間の送迎を定額料金で提供します(成田国際空港・中部国際空港・関西国際空港)。
・空港ラウンジ
国内28空港・海外2空港の空港ラウンジを、カード会員本人と同伴1名が無料で利用できます。
・最高1億円の旅行傷害保険
国内外の出張や旅行時に、旅行代金をアメックスで支払うと最高1億円の旅行傷害保険が付帯されます。
・国内航空機遅延費用
国内出張の際、カードでチケットを購入した航空便において遅延や手荷物紛失などがあった場合、それによる費用を最高4万円まで補償します。
・オーバーシーズ・アシスト
海外でのレストラン予約から緊急時の相談まで電話で対応します。世界中のほとんどの国から24時間通話料無料またはコレクトコールで連絡できます。
・ゴールド・ワインクラブ
入手困難な希少価値の高い銘柄の紹介や、予算に応じたワイン選びの相談など、ワインにかんするさまざまなサービスを用意しています。
・京都観光ラウンジ
重要文化財や国指定名勝の北庭、由緒ある小間の茶室などを擁する、京都の寺院の中でも特に有名な圓徳院で、古都ならではの伝統美を堪能できるラウンジを同伴者3名まで無料で利用できます。
・コットンクラブ
ジャズやソウルなどの一流アーティストが出演する東京・丸の内のエンターテインメントクラブ「COTTON CLUB(コットンクラブ)」にて、カード会員限定の特典を提供します。
・新国立劇場
本格オペラをはじめ、バレエ、現代舞踊、演劇といった現代舞台芸術を高い水準で上演し続ける新国立劇場にて、さまざまな特典を用意しています。
・キャンセル・プロテクション
突然の病気・ケガによる入院などで予定していた出張のキャンセルや、接待用に購入したチケットを使えなくなってしまった場合、キャンセル費用などの損害を年間最高10万円まで補償します。
・オンライン・プロテクション
インターネット上での不正使用による損害を全額補償。安心してオンライン・ショッピングを楽しめます。
・リターン・プロテクション
このカードで購入した商品の返品を購入店が受け付けない場合、購入日から90日以内の商品の購入金額がアメックスから払い戻されます(1商品につき最高3万円相当額まで、1会員口座につき年間最高15万円相当額まで)。
・ショッピング・プロテクション
国内・海外を問わず、このカードで購入したほとんどの商品について、購入日から90日以内に生じた破損・盗難などの損害を、1名あたり年間最高500万円まで補償します(免責金額として1事故につき1万円)。
アメックス独自のビジネス向けサービスに加え、ここで紹介したアメックスならではの充実のサービスを上手に利用することで、事業をスムーズに進めていくことができそうです。
以上の点から、アメックス・ビジネスゴールドカードは個人事業主にとって、ファーストチョイスとなるクレジットカードと言っていいでしょう。