個人間融資金利TOP

昨今、個人間融資のトラブルがニュースになることも多いので、「個人間融資=見知らぬ人同士の金銭授受」と思われている方も居るかもしれません。

実は、家族や親せき間など、知っている人同士のお金の貸し借りに関しても「個人間融資」と呼びます。

一方で、「見知らぬ人」でなければ、個人間でのお金の貸し借りは問題無いのでしょうか。

このコラムでは、家族や親せきなど「知っている人」との個人間融資に関わる話から、「見知らぬ人」との個人間融資の怖さについても解説していきます。

個人間融資で利息は設けた方がいいの?

家族や親せき、または友達などの間で行う金銭のやり取りに関しては、一見自由に思われるかもしれませんが、以下3つの法律が関わっています。

・相続税法
・利息制限法
・出資法

一つひとつ見ていきましょう。

相続税法

まずは相続税法です。一定の金額を超えると課税対象になる可能性があります。

「親族間の借入は、客観的にみて借入であることを証明できなければ借入とは認められず、
実態は贈与だとみなされて贈与税が課税されてしまうことが考えられます。」

静岡相続手続きサポートセンターHP「親族間の金銭借入で贈与とみなされないための方法や注意点」より引用

贈与税の壁となる金額は「110万円」です。
110万円を超えると、贈与税の課税対象になるため注意が必要です。

例えば娘息子が新築物件を建てた時や結婚資金、孫の教育資金や車の購入費用など、人生の節目にまとまったお金を援助したい、という時はどうすれば良いのでしょうか。

その際は年間110万円以下であれば、贈与税はかかりません。

「贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。」

国税庁HPNo.4402「贈与税がかかる場合」より引用

「年間110万円を超える金額を、贈与ではなく貸すだけ」という場合は、利子をつける、書面にするなどして、「貸している」ことを証明することが大切です。

ただし、利息を受け取る場合は、利息の金額次第では所得税の課税対象になる可能性もあるので、ここも注意が必要です。

所得税は細かく分けて、利子所得・配当所得など10種類に分類されます。

個人間融資の利息は「利子所得」ではなく、「雑所得」の扱いになります。

一見利子所得のようにも見えますが、利子所得は預貯金の利子や、債権・合同運用信託・債権の投資信託・公募公社債運用投資信託での利益の分配による所得のことを言います。

「個人間での金銭貸借については金利をつけるつけないは、当事者同士の話し合いで決まります。金銭消費貸借契約書に金利についての記載がなくても、法律的には有効です。」

堀江行政書士事務所HP「親族間の金銭消費貸借契約の注意点」より引用

利息を設けるかどうかは、個人で決めて良いものとされています。

贈与税の対象にならないようにするために、利息を設ける人もいるようです。

では、個人間融資の金利に上限下限の決まりはあるのでしょうか。

ここでは利息制限法、出資法という法律が関係しています。

利息制限法

利息制限法によると、借入の元金に応じて上限の金利が異なります。

利息制限
  • 元金が10万円未満なら金利の上限は年20%
  • 元金が10万円以上なら金利の上限は年18%
  • 元金が100万円以上なら金利の上限は年15%

借り入れ元金が高額になればなるほど、金利の上限は下がっていきます。

出資法

出資法では以下のように制定されており、個人間融資の上限は年109.5%と定められています。

第五条

金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

※出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)より引用

また、出資法によると、年109.5%以上の利息を受け取ると「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」が科せられます。

下限に関しては、利息制限法も出資法も設けていません。

個人間融資における利息の設け方と罰則

上限 下限 違反した時
利息制限法 年15.0~20.0% 表記なし なし
出資法 年109.5% 表記なし 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金

個人間融資でも遅延損害金は発生するの?

カードローンやクレジットカードの支払いは、一日でも遅れると遅延損害金が発生します。

同じように、個人間融資でも貸し主が遅延損害金を設定することができます。

個人の遅延損害金については、利息制限法に記載があります。

利息制限法による個人間融資の「遅延損害金」
  • 10万円未満→年29.2%
  • 10万円以上100万円未満→年26.28%
  • 100万円以上→年21.9%

貸金業者への返済が遅れた時に課される遅延損害金の金利は、年20.0%が上限と統一されています。

個人間融資とは数字が異なることがわかりました。

法律で定められた上限金利を超えた遅延損害金の要求は、無効にすることが出来ます。

法律改正があったとしても、遅延損害金の金利を書面で記載しておけば、書面の金利で支払ってもらうことが出来ます。

利息制限法と出資法の罰則の違い

例えば、Aさんが「10万円貸すから1か月後に利息つけて10万5,000円返して」とBさんに10万円を貸したとします。

これでは利息が年18%を超えてしまうので、利息制限法の上限を超えていますが、AさんもBさんも罰則の対象にはなりません。

【利息制限法】には、違反しても罰則などの決まりは無いからです。

ただし、借りたBさん側が過払い金請求を起こすと、貸したAさんは法に基づいた金利の金額を調整し、Bさんが超過して払った金額を返還する必要があります。

過払い金の請求は、裁判になる場合もあるので費用や手間、精神的負担などを考えると借りる側も貸す側も上限金利を意識した方が良いでしょう。

一方【出資法】は、設定されている上限を超える金利を課した場合、5年以下の懲役刑・1,000万円以下の罰金刑のどちらか、またはその両方を受けることになります

貸した側だけが罰則の対象になり、借りた側は罪に問われません。

結局のところ「利息制限法、出資法どちらを参考に金利設定したらいいの?」と思われるかもしれません。

法律的には個人間融資ではどちらでも問題はありませんが、利息制限法を超える金利を設定すると、借り主に過払い金を請求された時に返す必要が出てくるため、利息制限法を参考にした方が良いでしょう。

金銭消費貸借契約書の書き方

個人間融資をする場合は、口約束やメールなどではなく「金銭消費貸借契約書」を書いておきましょう。

類似した文書に「借用書」がありますが、これは融資する「貸主」だけが持っているものです。

貸主だけが保管していると、書類の改ざんや紛失の危険もあり、返済がいざ滞った時に揉めてしまう可能性があります。

個人間融資の際には、【融資する貸主】と【借りる借主】の両方が保管できる「金銭消費貸借契約書」を作成し、それぞれで保管するようにしましょう。

融資をする金額・返済日・返済にあたっての方法といった個人間融資に関する様々な取り決めを文書で残し、貸主・借主が署名と捺印をします。

金銭消費貸借契約書の例

金銭貸借書
お金を学べる情報ポータル「ファイグー」より引用

以下の項目は、入れた方が良い項目とされています。

  • 融資をした日
  • 金銭消費貸借契約書の作成日
  • 貸主氏名、住所
  • 借主氏名、住所
  • 融資する金額
  • 一括払い・分割払いのどちらにするか
  • 返済期日(分割払いなら毎月の返済期日など)
  • 連帯保証人
  • 金利
  • 遅延損害金の金利(記載しなくても発生させられる)
  • 期限の利益喪失条項

また、融資に関わる数字は「大字(だいじ)」と呼ばれる漢数字の利用が基本です。

数字は「1」が「10」に、通常の漢数字も「一」が「十」に書き換えられる可能性もあるため、「壱」「弐」「参」「大字(だいじ)」を利用すると良いでしょう。

個人間融資における連帯保証人

連帯保証人は、借り主が返済出来なくなった時に、代わりに返済する立場になる人のことです。

借り主の返済能力が疑われる際には、連帯保証人を立てることも出来ます。

もし連帯保証人を立てることになったら、その旨も金銭消費貸借契約書に記載しましょう。

また、一度連帯保証人になった人は、法律上代理の返済を避けることが一切出来ません。

貸し主と借り主が話し合い、納得していれば、連帯保証人が居なくても心配ありません。

期限の利益喪失条項とは

融資は返済期限・返済日までは支払わなくてもいいものとなっており、これを「期限の利益」と言います。

例えば、AさんがBさんから10万円借りていて、毎月10日に少しづつ返済しているとします。

「Aさんは毎月10日になるまでは、Bさんにお金を返さなくてもいいよ」、これがAさんの持つ「期限の利益」です。

しかし、Aさんが約束を無視して10日を過ぎてもお金を払いません。

「金銭消費貸借契約書」に「期限の利益損失条項」が記載してある場合、返済日を守らない借り主Aさんは「期限の利益」を喪失します。

「期限の利益」を喪失すると、貸し主Bさんに「分割ではなく全額一度に返して欲しい」と言われても、Aさんは従うしかありません。

また、返済日関連の他に、以下の内容を載せることもできます。

〈期限の利益喪失条項の主な例〉

  • 返済の滞納
  • 借主に競売、破産。民事再生手続きの申し立てがあった
  • 租税の滞納処分があった
  • 借主が貸主に通知せずに住居を移転

このように、借り主が貸し主に対して大きな不義理をした場合に「期限の利益」を喪失します。

金銭消費貸借契約書に記載してもしなくてもどちらでも良いのですが、記載しなかった場合、毎月3万円の返済を滞納されていたとしても、残りの返済額の一括請求はできず、完済日が後ろ倒しになっていきます。

いざという時に効力を発揮するので、貸す側であれば、書いておいて損は無いでしょう。

見知らぬ人相手はNG!個人間融資でのトラブル

「#個人間融資」「#個人融資」といった言葉を、SNS上で見たことがある方もいるかもしれません。

近年ネット上での個人間融資を通じて、詐欺や性的被害に遭うなどの事件が増えてきています。
具体的にどのような被害が出ているのでしょうか。

個人間融資詐欺の実例

1.保証金詐欺

わかりやすい保証金詐欺の実例を紹介します。

携帯電話料金の滞納などでお金を借りられるところがなく、SNS で融資をしてくれる人を募った。

融資するという人が現れたので、SNS でやり取りをして 100 万円を借りることにした。

保証金として 20 万円の融資に対して1万円が必要と言われ、5万円を支払ったが、その後、相手と連絡がつかなくなった。だまされたのか。(2019 年2月受付 20 歳代 女性)

独立行政法人国民生活センター「SNSなどを通じた「個人間融資」で見知らぬ相手から借入れをするのはやめましょう!」より引用

個人融資をするという名目で、まずは〇万円支払って欲しい、その後に融資額を振り込むなどと言われ、お金を振り込むと連絡が途絶えるパターンです。

2.法外な金額を請求された

生活費が不足し、他からの借入れができなかったため、個人間融資の掲示板サイトにお金を貸
してほしいと書き込み、返事をしてきた人と直接会って計 15 万円を借りた。

これまでに 50 万円以上返済したが、さらに 400 万円を支払うよう連絡がきた。

相手は自分の住所を知っている。どうしたらよいか。 (2018 年7月受付 50 歳代 男性)

独立行政法人国民生活センター「SNSなどを通じた「個人間融資」で見知らぬ相手から借入れをするのはやめましょう!」より引用

これは、とにかく高金利の支払いを求められ続けている例の一つです。

自分の住所も知られてしまっていて、逃げ場が無い状況です。

3.性的な写真を要求される

個人間融資の利息を免除する、などと言って性行為や性的な写真を要求される例です。

インターネットの個人間融資のサイトを利用していた知人を通じて、個人とメールなどでやり取りするようになり、15 万円の融資を依頼した。

毎月の返済額は1万 5,000 円がぎりぎりだと相手に伝えたところ、「それだと利息がついて総額 100 万円を超す返済額になる」とのことだった。

相手に写真を送れば、利息を免除してくれるというので、要望されるままに下着姿や裸の写真などを送った。

しかし、融資は受けられず、こちらからの連絡にも返事がこなくなった。どうすればよいか。
(2019 年2月受付 30 歳代 女性)

独立行政法人国民生活センター「SNSなどを通じた「個人間融資」で見知らぬ相手から借入れをするのはやめましょう!」より引用

見知らぬ人と融資目的で会ったり、連絡を取り合うことは相当なリスクが伴います。

4.アフィリエイト登録詐欺

また、SNSを通じて出会った人から、マッチングサイトやアフィリエイトサービスへの登録を提示されて、前払いや立て替えを依頼されてお金を振り込んでしまう事例もあります。

SNSで知り合った女性から「ぜひ会いたい」と連絡があり、紹介された出会い系サイトに登録した。

「メールアドレスを交換して直接やりとりしたい」「費用は後で支払うので、立て替えてほしい」と言われ20万円を支払ったが、まだアドレス交換ができない。

独立行政法人国民生活センター「デジタル・プラットフォームに関するトラブル」より引用

こういったサイトに登録したところで実際に融資は受けられず、ただ個人情報を相手に渡して終わってしまった、さらに他の業者に個人情報を売られて二次被害にあってしまったという報告もあります。

また、個人間融資を持ち掛けられて借りてみると正体は闇金だった、などSNS上の個人間融資には大きなリスクが潜んでいます。

「#お金あげます」「#お金配り」

SNSによる個人間融資の詐欺とは異なりますが、Twitter上には「#お金あげます」「#お金配り」のようなハッシュタグや、お金をあげることを目的としたアカウントがあります。

前澤社長のように本当にお金を配っている方も居ますが、各SNSで大量に偽・前澤社長のアカウントが存在するように、それを利用した詐欺を行おうとしている人の方が沢山居ます

お金をもらえるはずなのに「クレジットカードの番号を登録」「まずは〇〇円ここに振り込んでください」などの言葉が出てきたら、疑ってかかる方が無難でしょう。

SNSの「#個人間融資」「#個人融資」に注意

このように「Twitterで出会った人にお金を貸したら返してもらえない」「SNS上の友達に万単位のお金を貸したらブロックされて連絡がつかない」といったSNS上のトラブルは増えています。

金融庁では「貸す側も借りる側も#個人間融資に要注意!」というチラシを作り、Twitterの公式アカウントでも注意喚起を行っています。

個人間融資注意チラシ

仮に自分自身や周りの人が、SNS上のお金のやり取りでトラブルになった時は、以下の相談窓口があります。

  • 金融庁 金融サービス利用者相談室(平日10時00分~17時00分)
    電話:0570ー016811(IP電話からは03-5251-6811 )
    FAX:03-3506-6699
  • 消費生活センター等の消費生活相談窓口
    電話:188(消費者ホットライン)
  • 警察
    電話:#9110(各都道府県警察相談ダイヤル)
  • 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター
    電話:0570-051051(IP電話からは03-5739-3861 )
    ※金融庁「SNS等を利用した「個人間融資」にご注意ください!」相談窓口 参照

見知らぬ人との個人間融資はNG!家族や親せき間でも書面管理は必須

個人間融資は、見知らぬ人やネット上でつながっていても会ったことが無い人とは行わないようにしましょう。

家族・友人・親せきの間でどうしても貸し借りが必要になった際には、「金銭消費貸借契約書」を作成しましょう。

書面にしておけば、返済が滞ることがあっても一括請求が出来たり、弁護士に相談しやすくなるなどメリットがたくさんあります。

どんなに親しき間であったとしても、贈与で無いのであれば書面を作成した方が良いでしょう。