家族が勝手に借金をしていたら離婚できる?返済義務はある?

勝手に借金してたことが発覚!借金を理由に離婚はできる?

お互いに合意の上であれば、何が原因であっても離婚をすることはできますが、どちらかが離婚に合意しない場合、裁判をすることになります。

例えば、借金が離婚の理由である場合、もともと仲が悪かったわけでなければ、離婚に同意してもらえないこともあるでしょう。

ただ、裁判に発展してしまうと借金では離婚が認められない可能性が高くなってしまいます。

裁判で離婚するには十分な理由が必要であり、法律によって「法定離婚事由」というものが定められています。

法定離婚事由

不貞行為

いわゆる浮気や不倫のことで、基本的には肉体関係の有無で判断されます。

悪意の遺棄

勝手に家を出て帰ってこない時や生活費を渡さないなど、夫婦の義務を一方的に怠っていることは離婚の理由として認められます。

3年以上の生死不明

3年以上音信不通であり、警察に捜索依頼をしても見つからないなどの場合には、離婚が認められることがあります。

配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと

統合失調症や双極性障害など、意思疎通が困難で夫婦関係を維持できないほどの精神病に罹り、回復の見込みがない場合は、離婚事由として判断される可能性があります。

その他婚姻を継続し難い重大な事由

日常的なDVやモラハラ、アルコールやギャンブルなどの依存症、常識を逸脱するほどの宗教活動、長期間の別居など、夫婦として共に生活をしていくことが難しいと判断されれば、法律で離婚が認められます。

借金によって信頼関係が破綻したため離婚したくても、生活費を入れない、借金でギャンブルをしているなど、借金以外にも理由がないと、離婚は難しいといえるでしょう。

借金での離婚は、協議離婚か調停離婚で

協議離婚は、配偶者と話し合った上で、離婚が合意して役所に離婚届を出すことで成立する一番簡単な方法です。

ただ、配偶者が話し合いから逃げてしまう、離婚したくないと主張するなどケースでは、成立が難しくなります。

協議離婚が難しい場合には、家庭裁判所で調停委員や家庭裁判所調査官などが間に入り、話し合いの場がもたれます。

調停離婚は調停委員が夫婦双方の意見を聞き、婚姻を継続することが難しいことの証拠や書類などを提出して、離婚の合意や条件などの調整を行ってくれます。

調停期日は1ヶ月に1回程度で3ヶ月~半年程度、長いときには1年ほどかかり、その間は夫婦が顔を合わせないような配慮がなされています。

合意に至れば調停が成立し、10日以内に離婚届に調停証書謄本を添えて役所に提出することになりますが、成立しなかった場合は離婚審判や離婚裁判へと進むことになります。

結婚相手の借金は基本的に返済義務なし!ケース別に解説

配偶者が借金をしていたことを知らなかったとしても、夫婦として相手の借金の返済義務が発生するのではないかと不安を抱くこともあるでしょう。

ただ、借金は基本的に貸した側と借りる側の二者間で締結される契約であるため、連帯保証人になっていない限り、借金の返済義務は当人のみとなります。

ケース①:趣味・娯楽のための借金

趣味や娯楽のための借金は、個人的な理由による借金であるため、離婚前に契約されたものであっても、配偶者に返済の義務はありません。

ケース②:奨学金など結婚前に契約した借金

奨学金や車のローンなど、婚前に契約した借金は、結婚した後に返済を行っていたとしても、配偶者に返済義務が生じることはありません。

ケース③:単独名義で契約した住宅ローンやカーローンなどの借金

離婚を行うときには、夫婦で築いた財産は折半するという考えがあり、婚姻中に購入した住宅や車などの資産は夫婦の共有財産として、財産分与の対象となります。

住宅などの資産については分与の対象ではありますが、法律上、住宅ローンなどの負債については資産と判断されないため、財産分与の対象とはなりません。

住宅ローンやマイカーローンなど、配偶者の単独名義で購入している場合、離婚の後に返済義務が生じることはありませんが、購入時の契約については確認しておきましょう。

相手の借金の返済義務が自分にも及ぶケース

ケース①:保証人や連帯債務者になっている

住宅ローンやマイカーローンを共有名義で購入していたり、連帯保証人になっている場合は、離婚後も返済義務が生じることになります。

離婚してもすぐに名義変更できるわけではないため、離婚前にローンの借り換えや連帯保証人の変更などを行っておくと、面倒を減らすことができます。

ケース②:借金の目的が「日常家事債務」だった

食費や家電、医療費、水道光熱費など、夫婦生活を維持するために必要な借金の場合は、「日常家事債務」として配偶者にも返済の義務が発生します。

民法の第760条には「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」という記載があり、第761条では日常の家事に関する債務の連帯責任を規定しています。

「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」とあり、実際に判決で支払いが命じられた事例があります。

賃金業者から返済を要求されることはありませんが、話し合いの中や調停で求められた場合には、拒否することは難しいでしょう。

ケース③:家族の医療費や教育に必要な借金だった

家族の医療費や教育のために必要な借金も、日常家事債務に含まれるため、子どもの教育ローンや習い事の支払いなどは、離婚後も支払い義務が生じます。

借金を理由に離婚する際に注意したい点

借金を理由として離婚をする際に、日常家事債務以外の負債は、配偶者に返済の義務はありません。

ただ、離婚するにあたって支払い義務のあるものが発生することには注意が必要です。

支払い義務が発生するもの

財産分与

財産分与は、婚姻期間中に夫婦で築いた資産を離婚によって精算することであり、一方が働いていない場合でも共同の資産として基本的に折半する必要があります。

婚姻期間中に築いたものが財産分与の対象となるため、婚姻前や離婚後の資産については対象外となりますが、離婚から2年以内であれば、厚生年金の分割を請求することができます。

個人の趣味や娯楽のための借金は分与の対象外ではありますが、借金で生活費が減っていたとしても、相手の求めによって、公平に財産分与はしなければなりません。

相手の借金によって離婚を検討し始めた時点で、個人的な娯楽のための借金である証拠を保管しておくことで、財産分与の金額を少しでも多く守ることができます。

養育費

離婚の一因が相手または自分の借金だったとしても、養育するべき子どもがいる場合、養育費の支払い義務が発生します。

養育費とは、子どもの教育や育てていくために必要な費用であり、経済的・社会的に自立するまで必要です。

夫婦が離婚して親権がなくなったとしても、子どもの両親でなくなったわけではないため、養育費は支払い義務があります。

記録や書面は重要

財産分与を決める際、個人的な借金であることや日常生活債務である証拠がないと、分与の金額に対して不利に働いてしまうことがあります。

借金が原因の離婚である場合、慰謝料が発生しないケースが多く、また相手に離婚の要因があると認められたとしても、支払いの能力がなく、実際には慰謝料をもらえないことも考えられます。

慰謝料としてお金をもらうことができない場合には、財産分与を多めにもらう交渉になることがあるため、レシートや支払いの記録など証拠となりうる記録が必要です。

離婚した元配偶者からの養育費が滞っている場合など、なかなか支払ってもらえない場合には給料や預貯金の差し押さえなどの強制執行によって、支払いを受けることができます。

しかし、口約束だけでは「言った」「そんな約束はしてない」などの紛争となる可能性が高いため、養育費の金額・支払期間・支払時期・振込先などの取り決めを書面として残しておくことが重要です。

養育費に関する取り決めの公正証書で、一定の条件を満たしているものは執行証書と呼ばれ、相手からの支払いがない場合には、速やかに強制執行の手続きを進めることができます。

記録や書面を曖昧にしてしまうと、いざというときに請求できず、生活に困ってしまうという事態に陥ってしまうこともあります。

書面は必ず作成して公正証書などの法的な証拠書類として残しておくことで、後々トラブルが発生したときにもスムーズに解決できるようにしておきましょう。

配偶者が亡くなった場合の借金は返済義務が生じる?

基本的に、個人が契約した借金は配偶者であっても返済義務はありませんが、借金の名義人が亡くなった場合、その資産を相続すると借金も相続の対象となり、返済義務が発生します。

借金の返済を回避したい場合には、相続放棄や限定承認などを利用することが必要となるため、気を付けましょう。

相続放棄

亡くなった人の財産を放棄することで、借金も返済する必要がなくなります。

ただし、相続を放棄した場合は不動産や現金など、プラスの資産も一切相続することができません。

一度相続を放棄すると取り消すことができないため、故人の財産状況をしっかりと確認した上で行う必要があります。

限定承認

限定承認というのは、プラスの財産も借金もある時に、プラスの遺産の範囲内でマイナスの財産を相続するというものです。

不動産や住居など、手放すと困る相続財産がある場合、その価値以上に借金があったとしても、限定承認の手続きを行うことで、返済額をプラスの相続の限度にすることができます。

相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行うことが必要となるため、早めに財産の調査を進めるようにしましょう。

借金が理由でも離婚はできる

配偶者が勝手に借金を重ね、離婚をしたくなったときに、話し合いによる協議離婚や調停委員を挟んだ調停離婚では、何が理由であっても離婚をすることはできます。

ただし、離婚が裁判までいってしまうと、借金だけでは離婚の理由にすることは難しく、不倫などの不貞行為、DVやモラハラなど、その他に婚姻を継続し難い重大な理由が必要となります。

借金を理由に離婚を考えているときは、付け加える理由をメモでもいいので残し、ハッキリと出しておきましょう。

生活に必要な日常家事債務と捉えられる借金に対しては支払いの義務が生じる可能性がありますが、個人の趣味や浪費による借金は、配偶者であっても返済の義務はありません。

相手の借金によって離婚を検討したときには、家事債務として連帯責任のある支払いや財産分与についてを確認しておくといいでしょう。

住宅ローンやマイカーローンなどの支払いで、共有名義や連帯保証人になっている場合は、離婚の前にローンの借り換えなどによって単独名義への変更や別の連帯保証人を立てるなど、事前の対策をしておくことが大切です。

離婚の成立時には、取り決めた内容をきちんと公正証書などの法的な証拠として残しておくことで、離婚後にトラブルが起きたときにも安心して立ち向かえるようにしておきましょう。