過去にローンやクレジットカードなどに対し支払いの遅れや、返済仕切れなかったというような情報は、信用情報機関に登録されます。
こうしたお金に関するマイナス情報のことを、異動情報とも呼びます。
更には、債務整理をした事実が信用情報に記録されると、俗に言う「ブラックリスト入り」の状態になります。
実際に「ブラックリスト」というリストが存在する訳ではありませんが、この状態も金融事故の一つです。
このコラムでは、どのようなものを金融事故と言うのか、金融事故を起こすとどのような影響があるのか解説します。
そもそも金融事故とは?
金融事故というのは、クレジットカードやカードローンにおける返済の遅延・滞納、借り入れ額の返済が不可能になった事実を指します。
他にも、自己破産などの債務整理をした場合のことを指し、クレジットカードやカードローンの利用になんらかの不都合や不具合、失敗が発生した状態も金融事故に相当します。
自己破産・任意整理・個人再生などの債務整理も同様です。
これらの金融事故を起こすと、信用情報に「異動」と記載されます。
銀行や消費者金融が信用情報を見ることで、誰が金融事故を起こしているかが分かります。
信用情報とは?
クレジットカード・カードローンの利用や、支払の履歴に関する個人の情報を信用情報と呼びます。
信用情報は、主に以下の信用情報機関が保管しています。
〈3つの信用情報機関〉
信用情報機関 | 加入企業の傾向 |
全銀協(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行、農協、信用金庫 |
JICC | 消費者金融 |
CIC | 大手消費者金融 |
銀行は全銀協に、中小の消費者金融はJICC、大手消費者金融や一部銀行もCICに加入しています。
クレジットカードやカードローンに申し込みをすると、自社・他社関係なく信用情報を材料に申込者の経済能力を見ます。
■信用情報機関が金融事故を記載する期間
金融事故 | 全銀協 | JICC | CIC |
債務整理 | 10年 | 5年 | 5年 |
クレジットカードやローンの代位弁済、長期滞納など | 最長5年 | 5年 | 5年 |
上記から考察すると、債務整理を行った人が再び消費者金融でお金を借りたい場合は5年、銀行で借りたい場合は最長10年、経過してから申し込む方が良いでしょう。
金融事故として扱われるのはどれ?
それでは、どういった状態が金融事故を起こしたことになるのでしょうか。
1つずつ解説します。
1)遅延・滞納
カードローンは、基本的に毎月返済日があります。
しかし、その毎月の返済日に引落し先の口座残高が足りなかった場合、返済が行われずに遅延・滞納したという扱いになります。
返済を滞納すると遅延損害金が課せられるので、返済日がいつなのか、忘れずにチェックしましょう。
また、クレジット会社の場合、情報の登録や更新のタイミングは原則月に一度であると、CICは公開しています。
加盟するクレジット会社によって締め日が違うため、タイミング次第では、延滞したのに記載されていない、ということもあるかもしれません。
2)債務整理
クレジットカードやカードローンの利用をしすぎたり、返済を滞納することで遅延損害金が発生、利息が膨らみすぎることがあります。
高額の返済に対応しきれなくなると、債務整理をする必要が出てきます。
債務整理とは、自己破産・個人再生・任意整理・特定調停のことを指します。
それぞれ、どのような内容なのでしょうか。
自己破産
自己破産は、裁判所に借金の返済ができないと認めてもらい、返済を免除されることです。
これはクレジットカードの支払額やカードローンなどの返済額だけでなく、クレジットカードのキャッシング、個人間の融資も含まれます。
自己破産の場合は、20万円以上の価値のある財産と、99万円を超える現金が没収されます。
個人再生
個人再生が認められると、借り入れ総額を5分の1から10分の1までの範囲内で減額させ、返済期間を3年〜5年延ばすことができます。
住宅ローンを完済していなくても、マイホームを所持していくことは可能です。
車に関しては、ローン返済中の個人再生になると手放す必要があり、マイカーローン完済後であれば車を所持し続けられます。
任意整理
裁判所を挟まずに、借金先と交渉をして、将来的に発生する金利をすべてカットする方法です。
また、その上で返済期間が3年〜5年で完済できるように毎月の返済額を見直します。
自己破産と異なる点は、財産の差し押えが無いことです。
特定調停
裁判所が債務者と債権者の仲介をして、借り入れ額の利息を上限金利である年15%〜20%に引き直して返済総額を決定します。
任意整理と似ていますが、特定調停は裁判所を挟み、任意整理は裁判所を挟みません。
「過払い金請求」は金融事故ではない
他には、「過払い金請求も債務整理の一種として金融事故扱いされるのでは?」という声があります。
しかし「過払い金請求」は、利息制限法を超えた利息を過去に支払っていた「債務者」が、利息を返してもらうことです。
「債務整理」は、債務者の返済内容を変更して完済に向かわせることなので、「過払い金請求」とは全くの別モノです。
3)代位弁済
カードローンは、担保も連帯保証人も必要なく、借り入れができる金融サービスです。
なぜかというと、仮に申込者が返済不可能になっても保証会社が代わりに返済をしてくれるからです。
これを代位弁済と言います。
保証会社に代位弁済をしてもらうことは、金融事故扱いになります。
4)強制解約
カードローンやクレジットカードの返済・支払の滞納と似ていますが、クレジットカードの利用において、規約に反する行為があると、強制解約となります。
強制解約になると、利用しているクレジットカードが利用不可能になり、失効してしまいます。
強制解約になった場合も、金融事故として信用情報に記載されます。
それでは、どのようなことをすると強制解約になるかを解説していきます。
■強制解約になる理由
〈不正利用〉
クレジットカードはショッピングをするだけではなく、提示して特典を受ける、ポイントを貯めるなど、様々な使い方があります。
しかし、クレジットカードの現金化をすると、不正利用と見なされます。
他にも第三者へのクレジットカードの貸し出しがバレてしまうと不正利用と見なされて、クレジットカードの強制解約に繋がります。
〈虚偽申告〉
クレジットカードの発行申込をする際には、申込フォーム、もしくは申し込み用紙に必要事項を記入して申告します。
そこで本来とは異なる内容を記入し、それがバレてしまうと虚偽申告とされ、強制解約になります。
これは意図的ではなくとも、虚偽申告と扱われる場合があるので、申込をする際には気をつけましょう。
〈他社の延滞〉
クレジットカードを複数枚、利用している場合は、一社で延滞すると他のクレジットカードの利用に影響する場合もあります。
そのため、普段利用しているクレジットカード以外のクレジットカードの支払いや、カードローンの返済もしっかりとしておく必要があります。
もしも、他社のクレジットカードやカードローンの利用に長期の滞納が発生し、金融事故となった場合は、普段から利用しているクレジットカードも強制解約となります。
強制解約になっても支払いの義務は残る
なお、強制解約になって、クレジットカードを利用できなくなっても、支払い義務は変わらず続くことは覚えておきましょう。
自己破産のように支払い義務が消えるわけではないので、支払いを継続していく必要があります。
金融事故のデメリット
金融事故が起きるとどのようなデメリットが発生するのでしょうか。
- 5年〜10年間のローン・カード・ETCカード利用不可
- スマホの割賦購入がしにくくなる
- 新規でクレジットカード作成、カードローンが利用しにくくなる
- 社内ブラックリストに入る
詳しく見ていきましょう。
1)5年〜10年間のローン・カード・ETCカード利用不可
金融事故によって信用情報に異動情報が記録されると、5年から10年の間はクレジットカードの発行と利用、カードローンなどのローンの契約と利用が一切不可能になります。
クレジットカードだけではなく、クレジットカードに紐づけされたETCカードも利用不可能になるということです。
さらに、銀行や消費者金融による学資ローン・マイカーローン・マイホームローンなども利用できなくなります。
2)スマホの割賦購入は難しい
新規のスマホはグレードアップしたものを買おうと考えても、過去に一度金融事故を起こしてしまうと、複数回に分けて支払う割賦購入が難しくなります。
これは、スマホの分割払いもローンに分類されるからです。
そのため、高額のスマホを購入したい時も、過去に金融事故を起こしていたら、一括購入の一択になります。
3)新規でクレジットカード作成、カードローンが利用しにくくなる
金融事故の情報が消えた後は、信用情報には何も記載されていない真っ白な状態になります。
こうなると、クレジットカードの新規発行やローン契約などをする際、逆に苦労することになります。
なぜかというと、金融事故によって信用情報が真っ白になっていると、審査側は「今までカードローンの契約や、クレジットカードを利用したことが無い」もしくは「ブラックリストに入っていて、最近情報が消えた」の両方の側面で考えます。
たとえ前者だったとしても後者の可能性も考えられてしまうので、審査に通りにくくなります。
4)社内ブラックリストに入る
自己破産などの債務整理やクレジットカードの強制解約など、金融事故を起こすと、信用情報に記録されるだけでなく問題を起こした企業にも、その情報は記録されます。
これは俗に言う「社内ブラック」という状態です。
問題を起こした企業にクレジットカードやカードローンの借り入れ申込をしても、審査をする前に自動で落とされるようになってしまいます。
金融事故を起こし信用情報から異動情報が抜けても、過去に問題を起こした企業に申込をするのは控えるようにしましょう。
自分に金融事故が起きていないか確認する方法
自己破産のような債務整理や強制解約まではいかなくても、数日の滞納などは自覚しにくく、ついついやってしまうという人もいるかもしれません。
クレジットカードやカードローンなどの申込の際、金融事故を起こしているとほぼ審査に落ちてしまいます。
申し込みをする前に、自分の過去に金融事故が発生しているのか確認できる方法があります。
自分の信用情報に不安がある人は、一度確認してみましょう。
信用情報の開示請求
信用情報を確認するには、全銀協・JICC・CICに「信用情報開示請求」をする必要があります。
1)全銀協
銀行が加入している信用情報機関である、全銀協の信用情報開示請求は、以下のように行います。
■郵送の場合
〈必要書類〉
開示請求申込書 | 「登録情報開示申込書(手書き用)」か登録情報開示申込書(直接入力用) |
手数料 |
|
本人確認書類(どれか2種類) |
|
「本人開示手続き利用券」は、ローソン・ミニストップ・ファミリーマートでは1,200円、セブンイレブンでは1,124円です。
以上の書類を用意したら、センターに郵送して本人開示請求の手続きが完了します。
■インターネットの場合
全国銀行協会のホームページ「インターネット開示について」から申し込みが可能です。
2)JICC
JICCでは、コロナ禍の影響で窓口受付は当面休止にしています。(2022年12月現在)
スマホ・郵送のどちらかで本人開示請求の手続きをすることになります。
■スマホの場合
- アプリをインストール
- 利用規約を確認
- メールアドレスを送信
- JICCがパスワードを発行
- パスワードの入力
- 申込内容を入力
- 本人確認書類と自撮り写真の撮影、送信
- 手数料の支払方法を選択
- 申込内容を確認
- 開示結果が郵送されるのを待つ
■郵送の場合
- 信用情報開示申込書の準備
- 手数料の準備
- 本人確認書類の準備
- JICCへ郵送
〈必要書類〉
信用情報開示申込書 |
|
手数料 | 1,000円(税込) |
本人確認書類2点(1点は現住所記載) |
|
手数料は、クレジットカードか定額小為替証書にて支払うことができます。
スマホ経由の請求の場合は、本人確認書類を用意するのみとなります。
3)CIC
CICでは、PC、スマホ、郵送で申し込むことができます。
■PCの場合
- 「お手続き前の確認事項」をチェック
- クレジット契約で利用した電話番号からかけて受付番号の取得
- それから1時間以内に受付番号を入力
- 「開示報告書」のpdfファイルをダウンロード
- 「開示報告書」を印刷
手数料1,000円をクレジットカードで支払います。
■スマホの場合
- 「お手続き前の確認事項」をチェック
- クレジット契約で利用した電話番号からかけて受付番号の取得
- それから1時間以内に受付番号を入力
- パスワードを入力して「開示報告書」を開示
こちらもクレジットカードにて手数料1,000円の支払いをします。
■郵送の場合
- 必要書類を用意
- ゆうちょ銀行の定額小為替証書にて手数料1,000円を用意
- 「必要書類」と「手数料」を郵送開示センターに郵送
- 10日後に開示報告書が郵送される
〈必要書類〉
信用情報開示申込書 |
|
本人確認書類(どれか2点) |
|
本人確認書類の1点は、現住所が記載されている必要があります。
信用情報を開示したら金融事故を発見!どうすればいい?
信用情報開示請求によって、自分が金融事故を起こしていたと気付いたら、やるべきことは一つです。
クレジットカードの申込とカードローンなどのローンの申込は、しばらく控えるようにしましょう。
金融事故が起きてもできること
クレジットカードの申し込みや、カードローンの利用はしばらくできませんが、金融事故が発生してもできることはあります。
1)携帯電話の契約
金融事故を起こすと割賦購入は難しくなりますが、本体代金を一括で支払えるのであれば、契約は変わらず可能です。
スマホがあればQRコード決済が利用できるので、キャッシュレスの支払いも可能になります。
2)QRコード決済(銀行からチャージする)
LINE PayやPayPayのように銀行からチャージをして決済するシステムは、スマホがあれば利用可能です。
そもそもクレジットカードが持てないので、クレジットカードとの紐づけはできません。
銀行から直接チャージできる設定にしましょう。
QRコード決済は、還元率アップ特典やクーポンの配信などもあるため、おトクに活用することもできます。
3)デビットカード・プリペイドカード・ETCパーソナルカードの利用
クレジットカードの発行と利用が不可能になっても、デビットカードとプリペイドカードは発行・利用が可能です。
デビットカードは、利用と同時に指定口座からお金の引落しがされるもので、プリペイドカードはチャージしておいた分だけ利用できるというものです。
どちらもクレジットカードと違って、支払日というものはないので、発行する際に審査もありません。
ポイントプログラムが付帯されているので、利用するだけでおトクにショッピングができます。
また、ETCパーソナルカードは、デポジットと年会費を支払うことで利用可能になるETCカードです。
月間利用額の4倍をデポジットすることで、利用可能になります。
4)賃貸契約
アパートやマンションの契約をする際には、審査を受けることになります。
金融事故が直接的に賃貸契約の妨げになることは、まずありません。
大家さんや管理会社は、家賃と収入のバランスや人柄など複合的に見て、契約可能か判断しています。
5)保険への加入
学資ローンやマイホームローンなどは利用できなくなりますが、保険の加入は可能です。
金融事故を起こしても火災保険、地震保険、生命保険や旅行傷害保険への加入が不可能になることはありませんので、安心しましょう。
6)個人間融資など
金融事故を起こすと信用情報に異動情報が記録されるため、借り入れが不可能になります。
個人間融資は、信用情報を参照されたりしないので利用可能かもしれません。
ただし、カードローンが使えないからといって知り合いにお金を借りるのは、あまり良い印象を与えないでしょう。
生活福祉資金貸付制度・年金担保融資・緊急小口資金などの公的支援も利用できるので、困った時にはこちらを検討しましょう。
金融事故を起こしたと思ったら確認が大事
金融事故を起こすと、いわゆるブラックリスト入りの状態になります。
これによって最長10年間はクレジットカードとローンの利用と申込、契約ができません。
「金融事故を起こしたかもしれない」と不安になったら、以下のことをしましょう。
〈金融事故を起こしたときにすべきこと〉
- 信用情報開示請求
- 金融事故を起こしたかを信用情報で確認
- プリペイドカードやデビットカード、QRコード決済に切り替える
- ETCカードは、ETCパーソナルカードに切り替える
- 生活に困ったら公的融資制度を検討
クレジットカードはそのうち使えなくなるため、デビットカードに切り替えたり、ETCカードはETCパーソナルカードに切り替えておくと、慌てずに済みます。
またスマホの機種代は分割払いで購入することはできないので、まずは今使っているスマホを大切に使いましょう。